これから家を建てる人にメリットのある法律
~品確法:住宅の品質確保の促進等に関する法律~ --- 2000年10月17日

 

 今年の四月に施行した品確法,「住宅の品質確保に促進等に関する法律」にもとづく住宅性能表示制度が十月初旬にも整い本格的にスタートしました。これにより、消費者はこれまで以上に安心して住宅を建て、安心してすめるようになります。その事について少し触れてみようと思います。


 品確法とは...
1. 瑕疵(かし)担保責任期間の十年間の義務化
2. 住宅性能表示制度
3. 裁判外の紛争処理体制

 上記三つの柱で構成されています。
文字通り住宅の品質を確保することをねらいにしてます。

 なぜこんな法律が出来たかというと、建築の条件や要求が多岐に渡る住宅では自動車や家電製品のように品質や性能を一律横並びで比較しにくいうえ、事前にそれらを確かめる事も困難です。工期は長期に及び現場施工の比重も高いので品質管理の徹底にも難しさがありますし、価格はいうまでもなく高いので消費者が住宅を取得する経験は生涯一、二度に限られ常に経験不足の状態から抜けだす事が出来ません。このため、住宅取得後に隠れた欠陥や期待した住宅でない事が分かったり、建設業者の倒産などにより住宅が完成しなかったり引き渡しが遅れたりするという二つの大きなリスクを消費者は常に背負ってきた面があります。そこで質の高い住宅を選びやすくし、取得後も安心して住める事を目的に品確法が制定されました。

10年保証
 すべての新築住宅で瑕疵担保責任期間を十年義務化した事は画期的ですが、材木屋の立場から言えばそんな事は当たり前で、逆に義務化しなければならない一部の建設業者がいることになさけない思いがします。これまで保証は二年間程度が通例でしたが対象となる基礎や柱、床、屋根、外壁、サッシなどの基本構造部分は外から見ただけでは気が付きづらく、しばらく住んでみないと分からないことが多かったのです。引き渡しから十年以内に欠陥が見つかれば消費者は無料の修理や賠償金の請求等を建設業者や売り主に求める事ができます。

住宅性能表示制度
 
住宅性能表示制度は消費者が外から見ただけでは分からない耐震性や省エネルギー性など九分類二十八項目の住宅性能を第三者が判定し、どの程度の水準にあるかを等級などで表します。これによりこれまで住宅メーカーが個々に訴求してきたセールスポイントを消費者は具体的に見比べられるようになりました。質の評価を共通の土俵で行える事で価格との比較もしやすくなります。
 九分類二十八項目の性能の中には住宅の最低限の基準を定めた建築基準法のレベルをベースにしたものもあり、そこではそのレベルを上回る等級を設定しています。住宅性能表示制度は従来以上に高性能の住宅づくりの指標を与えていると言えます。評価は設計と四回の現場審査を含む施工の二段階で行われます。欠陥住宅の根絶はもとより住宅の性能が明らかになり、しかもその性能を確保する住宅工事かどうかの確認が出来る事が重要です。十万~十五万円程度の性能評価費用は消費者の負担となりますが、利用するかどうかは消費者の選択に任されています。
 住宅性能表示制度は消費者だけでなく建築業者にもメリットがありそうです。これまでは高い技術力があってもそれを客観的に示すことが困難でした。しかし確かな腕があれば中小の建築業者の出番も増え、またイメージで捕らえがちな大手も自社のカラーを示し易くなります。
 また、将来的には中古住宅市場にもインパクトを与えそうです。入念な検査を経て性能が確認されていれる住宅は信頼性が高くそうでない住宅と価格の差が出るかも知れないと見られています。

裁判外の紛争処理体制
 施工段階の性能評価を受けた住宅で万一トラブルが発生した場合、裁判をせずに紛争を処理する仕組みも用意されました。弁護士や建築士が紛争処理委員となり、各地の指定住宅紛争処理機関が迅速にあっせん、調停、仲裁を行います。性能評価費用の一部を紛争処理に充てる為、申請料金は一万円で済みます。裁判ではたとえば五千万円の物件を対象に争うと当座の印紙代、弁護士費用だけでも三百万円ちかくになり期間も三~五年はかかると思います。評価制度によって設計図などの証拠資料がきちんと残る事になり裁判とは比較にならない早さと費用で紛争が解決するようになるでしょう。

課題
 この様に品確法によって消費者の住宅取得リスクは軽減されるでしょうが課題も残っています。
 たとえば表示された性能と価格の関連性。等級ランクのうちどこまでを必要としているかは消費者自身の判断にゆだねられますが、建築の知識に乏しい一般の消費者には選択が難しいでしょう。さらにもっとも感心の高いコストとの関連ですがこれを一律に連動して表示する事も難しいのです。
 しかし、全ての性能で安易に高い等級が求められるようになっては住宅として望まれるバランスを欠くし社会経済的にも資源の浪費につながります。
 住宅供給者側の工夫とともに消費者の立場でこれらの点に適切な助言を与えてくれるコンサルタント機能が望まれます。
 今後は住宅の高寿命化とストックの有効活用が求められる事から、住宅性能表示制度の中古住宅への適用も大きな課題です。劣化の度合いなどを測る検査技術の向上が不可欠ですが、時々のメンテナンスなどを通じて住宅の履歴を記録していくことも重要になるでしょう。
 海外では住宅性能表示の先進例としてフランスのキャリテル制度があります。同制度も任意制度で、新築住宅の四割弱に普及していると言われています。日本でも三~四割程度の普及が見込まれていますが、仮に普及率が二割にとどまったとしても住宅市場への影響は大きいでしょう。それは性能の等級だけで住宅の価値が決まるものではありませんが、消費者が選ぶ力をつけることで自分にとって本当に価値の有る住宅を選べる有力な道具が出来たからです。道具を生かすには消費者も腕を磨くことが必要です。

問題点
 住宅性能表示からもれた樹種で薬品の注入が難しいという理由の物もあります。薬品を注入しなくても十分な性能を発揮出来る木もあるのですが。。。シックハウス等問題になっている現在、こういう木が性能表示に載っていないと言う理由で使われなくなるのはかなり問題があると思います。また、地域や気候によって適不適の樹種もあります。
 法律は出来ましたが完璧なものとは言いがたいところが見受けられます。法律にもたれかかるのは楽ですが、建築会社も消費者も住宅性能表示だけに縛られず千数百年も前から使われている工法、用材を研究する必要があると思います。昔から伝わり歴史の積み重ねである技術がこれっぽちの条文で使われなくなるのは残念です。

新木場 吉田商店


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材木は曲がる反るクサル。生き物だったから。
コピーペーストできない。同じ物がないから。
ダカラ ヲモシロイ。

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